豊田章男社長が次のような発言をして話題になっていましたね。
「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」
企業でサラリーマンとして働く立場の方にはとても気になる話題だと思います。
この点について少し考えてみました。
※なお、この記事では終身雇用=年功序列、非終身雇用=成果主義という想定で書いていますが、必ずしもすべての企業がそうだというわけではありません。
いちサラリーマンとしての個人的な見解としては、終身雇用が崩壊した成果主義、実力主義の社会でどれだけ自分が通用するのかという意味では望むところです。ただし、家庭をもつ夫の立場としては、給料が安定しない点にやはり不安感もありますね。
終身雇用のデメリット
豊田社長の言葉をふまえ、まずは終身雇用のデメリットとは何かを考えてみます。
いわば、終身雇用がもたらした弊害とも言えるものです。
一度やとった社員を簡単に辞めさせられない
労働基準法第18条の2には、「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と示されています。
会社が倒産の危機にでもならない限りは、社員は定年まで雇用が保証されていると言えます。
よく携帯電話のプランなどでは「2年縛り」などの契約条件がありますが、正社員としての雇用は会社にとっていわば38年縛りともいえる契約かもしれません。
就職がゴールになる
「就職はゴールではない、始まりだ」とはどこかのCMで聞いた言葉です。笑
個人的にはまさにその通りだと思います。
しかし一方で、良い会社(大企業、高収入)に入りさえすれば安泰だと思い、入社後はほどほどの仕事しかしない社員が一定割合いるのも事実。
「働かないおじさん」とは言うように、どの会社にも大した仕事をしない、あるいは他社に仕事を押しつけているくせに年功序列で給料の高い社員がいます。こうした社員でさえ会社としては簡単にはリストラできません。
仮に、企業側がそうした社員をリストラ対象にできる、ということであれば少しは緊張感をもって仕事に取組むと思います。その結果、企業の業績も伸びるはずです。
年功序列の給与体系
中小企業では昇給がない会社もありますが、大企業では毎年、定期昇給やベースアップにより賃金が上昇し続けます。これは会社にとっては固定労務費の増加になります。
一方働く側の社員にとってみれば、せっかく入社して向上心を持ってバリバリ働いたとしても、前述の「働かないおじさん」の方が給料が高いわけです。
これでは社員のモチベーションもそがれるため、それを見て育った若手社員の何割かは同じように「働かないおじさん」化していくという悪循環に陥ります。
終身雇用が崩壊したら
では続いて、仮に終身雇用がなくなった場合どのような問題が起きるかを考えてみました。
住宅ローンが組みづらくなる
もし雇用が保証されない場合、いくら大企業社員とはいえ、30年などの長期ローンを払い続けられるという保証はどこにもなくなります。
そうなると金融機関としては、なにを見て判断するかというと、年収や貯蓄でしょうね。けっきょく大企業社員のほうがそうした面でも有利でしょうが、今よりは審査基準が厳しくなることは確実でしょう。
ライフプランが立てにくくなる=少子化への懸念
年功序列ではない給与体系になった場合、年齢が上がっても給与は上がるとは限りません。それだけならよいのですが、年収が下がる可能性もあるというのは、人生設計に狂いが生じかねません。
ということは、現状でも問題になっている未婚率の上昇に拍車がかかる恐れがあります。それはつまり少子化の流れ助長し、将来の生産労働人口が減るという、まさに負のスパイラルです。
とはいえ、雇用が流動的になるということは、平均給与としては今より上がるのではないかとも思います。もともとは国際競争力確保が目的でありますしね。
社員間に悪いライバル意識が生まれる
これは今もあるとは思います。ただし仮に自分のクビが掛かってくるとしたら、ほかの人を蹴落としてでも自分は会社に残ろう、という考えを持つ人もいるかもしれません。
その結果、チームワークという日本人のお家芸が失われ、市場での競争力が落ちる可能性があります。
全員が「仕事の成果、アウトプットで勝負だ」と考えてやる気を出すならばいいのですが。それよりも社内の権謀術策が得意な人はいますよね。
非終身雇用制度に移行しようとしたときの課題
では、最後に日本企業が非終身雇用制度に切り替えていこうとする場合生じるであろう課題について考えてみます。
万全な社内評価体制がなくては公平性が保てない
終身雇用がなくなる場合、もしも仕事の成果が十分ではない社員はクビになる可能性もあるということ。ただし、大企業であればあるほど、社内の部署数や業務内容は多岐にわたります。その中での査定が本当に公平かどうかの客観性はどう確保するのでしょうか。
結局のところ、会社での査定は上司の好き嫌いに影響を受けている部分が少なからずあります。
制度改革時には誰かが身を切らねばならない
もし非終身雇用体制になった場合、給与体系は業務内容に応じた評価になるでしょう。
よく言われる「同一労働同一賃金」の完全なる到来です。
だが、それはつまり、あまり仕事のできない40~50代社員についてはほぼ確実に現状よりも給料が下がることを意味しています。
会社経営陣が改革を進めようとしても、果たして現場の社員はその方針についていくでしょうか。自分の給料が下がるような制度改革に積極的に応じようという人はい。
逆に言えば、若い世代にはチャンスになるということでもありますが。
まとめ
以上、終身雇用制度の崩壊について考えてみました。
企業としては、制度改革を始めなくては国際競争力を保てない時代に入ってきていると思います。
だからこそ、働く社員の立場としては、次の2点が大事だと思います。
- いつ制度改革が始まっても良いようにまずは自分のスキルの向上に取り組むこと
- たとえ今の会社を辞めても生活していけるよう会社の収入だけに頼らない人生設計を立てること
簡単に言うと本業第一に取り組みつつ、副業あるいは資産運用を始めるということです。
とっても難しいですよね。生きづらい世の中だな、と感じます。
でも、自分と家族を守るのは自分しかいないので、ぼくも頑張ります。